宇宙と宇宙をつなぐ数学

帰り際に書店へ寄る時間ができたので,久々に丸善へ行って,ジョルジョ・アガンベン『例外状態』,加藤文元さんの『宇宙と宇宙をつなぐ数学』を買った.どちらもずっと読みたかった本なのでとてもうれしい.

『宇宙と宇宙をつなぐ数学』から始めて,まだ少ししか読めていないのだが,この本で取り扱っているIUT理論というのがとてつもなく好奇心をそそられるものだった.

理論提唱者はABC理論の解決の論文(http://u0u0.net/6uOW 内)で話題になった京都大学望月新一教授で,望月教授によると,IUT理論というのは,「「自然数」(中略)の足し算と掛け算からなる,「環」と呼ばれる複雑な構造をした数学的対象に対して,その足し算と掛け算の複雑な絡まり合い方の主立った定性的な性質を,一種の数学的な顕微鏡のように,「脳の肉眼」でも直感的に捉えやすくなるように組み立て直す(=再構成する=「復元」する)」数学的な装置のようなもの」だそうだ.揺るぎない性質だと考えられていた足し算と掛け算の関係性に変化があるのかもしれないという時点で,ものすごくわくわくするのだが,実際,IUT理論の核になる部分というのは,足し算と掛け算の間にある「尋常ならざる剛性(どこかですごく有名な表現らしいのだか不勉強のため分からない)」を解体し,変形することにあるらしい.さらに,様々な「緩み」=「不定性」が伴った状態で足し算と掛け算の関係性が再構成されるという.

この「「緩み」,「不定性」というのは必然的,不可避でありまた内在的でもある」というのがぼくはすごく面白いなと感じた.なぜなら以前,少しだけ触れていた圏論や興味が出ていた数論幾何学あたりにとても似ていたからだ.実際のところ圏論は議論が抽象的すぎて,地に足のつかない分野みたいなことを言われたりしているとか書いてあったような気がする.IUT理論も圏論ほどではないにしろ,その理論の難解さもあって数学者たちから「単なる抽象概念の複雑な絡まり」と受け取られていたりするそうだ.そのような印象を和らげる試みも『宇宙と宇宙をつなぐ数学』の中で行われている.

幸いに?ぼくは抽象的な議論が大好物と言っていいのか分からないが,すごく好きで理解したり考えることが楽しいと思うので,強い反発を覚えることはなさそうであるし,おそらくこの本を読み進めるうちにIUT理論についての理解もそうだけれど,他分野についてもう少し考え進められるところが増えるような気がする.

そしてこれがIUT理論を知りたい一番の目的であったりするのだが,学問を一つのいきものとしてみる文化進化論の既存の欠点を解消できるかもしれないとか考えていたりする.緩み,不定性を内在的に持っているという点がそこでもきっとすごく重要になっている.

最近は意識的に時間を取らないとじっくり本を読むことをしなかったりしてしまうのだが,それでもいつも通りおそらく盛大な寄り道をしながら読み進めたいと思う.

 

♯水平線の月付近