休学中に取り組みたい本たちの一覧とそのメモ:2

【貧困関連】

・『貧者と貧困』(西澤晃彦)

 放送大学の講義で扱われていた書籍.いまはこの講義に代わり,「人間にとって貧困とは何か」が開講されている.

 『人間にとって貧困とは何か』のボリュームについていけなくなったので,前身の『貧者と貧困』を読み始めた.こちらの方が一つ一つの題材を丁寧に扱っている印象がある.またこちらは資料が逐一載っているので参照がしやすい.内容の盛り込み方と編集の仕方はこちらの本の方が僕はわかりやすかった.

・『人間にとって貧困とは何か』(西澤晃彦)

 同じく放送大学の講義で扱われている書籍.1章につき3章くらいは割いていいんじゃないかと思うくらいボリュームが多い.貧困の概念が社会的に顕になっていった経緯や理由,また現在の貧困の状態,貧困を対象とした社会学者の概観などを1冊で見ることができると思う.ただ文体が少し独特なので講義を一緒に聴かないとわかりにくい気がする.先生の声がいい.

・『貧者の領域』(西澤晃彦)

 放送大学の教材を書いた先生の本.テキストよりも読みやすいらしい.

・『まなざしの地獄』(見田宗介)

 『貧者と貧困』,『人間にとって貧困とは何か』において参考書籍として扱われていた本.集団就職が行われていた時代の日本の状況をほとんど知らなかったので,この頃に貧困の下地の形成がより進行したことを初めて知った.「都市とは、ひとりひとりの「尽きなく存在し」ようとする人間たちの、無数のひしめき合う個別性、行為や関係の還元不可能な絶対性の、密集したある連関の総体制である」という一文が印象深い.

・『格差は心を壊す 比較という呪縛』(リチャード・ウィルキンソン/ケイト・ピケット)

 社会的弱者という立場に置かれた人たちの自尊心,心の問題について書かれている書籍は貧困を扱った書籍の中でも少ない印象がある(いままで読んだものの中では,神谷美恵子さんの著書,『弱者の居場所がない社会』(阿部彩)あたりが扱っている).相対的貧困においては,決して必要ではないものを買うことができるか否かが大きな分断点となる.その積み重なりは買える者と買えない者の差を一層大きくしていき,買えない者は比較を通して己の貧困を自覚することになる.「息苦しいすべての人へ」というメッセージがとても気になる.

・『海を撃つ』(安東量子)

 「私は忘れまい。今日見た景色を、聞いた話を、忘却の向こう側へ押しやられようとしていることたちを、あなたが忘れるのなら、私は記憶に、記録にとどめよう」

 帯に書かれたこの文字たちは,僕が貧困について考えることを決して止めないために常に心に留めておくべきものだった.弱者の経験というものは,それを経験したことがない人からすると弱者自体の存在すら忘却されることが多い.だから,経験し,それを知っている者は決してそれらを忘れてはいけないのだと思う.忘れてしまえば,いるはずの彼らは本当に存在しなくなってしまう.社会的な包括によってそれらの存在はなくなるべきであって,忘却によってなくなるべきではない.忘れられる者という点において,被災者も同じ境遇なのだと思う.経験と記憶,そしてその記録は僕が貧困を学び続けるにあたって常に必要なものになる.